だい23 子別こわかれイチゴ
 おやまに、イチゴが、たくさんなりました。
 こぐまは、イチゴが大好だいすきです。でも、どうしてか、かあさんぐまは、たべさせてくれません。
「イチゴ、豊作ほうさくだね」
 かあさんぐまが、きげんのよさそうなとき、こぐまは、そういいました。
豊作ほうさくでも、わたしはイチゴがきらいなんだよ」
「とってきてあげようか。きっと、きになるとおもうよ。」
 かあさんぐまは、プンと、横向よこむいてしまいました。
がっかりしているこぐまをみながら、かあさんぐまは「このとも、ことしはわかれなければならないのか」と、おもいました。
 くまの世界せかいでは、こぐまを一人前いちにんまえのくまにそだてるため、こぐまにイチゴをたべさせ、そのすきにおやぐまが姿すがたをかくしてしまうならわしが、むかしからあります。
これを、くまの「子別こわかれイチゴ」といいます。
 つぎかあさんぐまは、こぐまにいいました。
「そんなにイチゴがきなら、たべてもいいんだよ」
「ほんとにいいの」
 こぐまは、をかがやかせて、イチゴをつまんでくちにいれました。
 ほんのすこしたべるつもりでしたが、あんまりおいしいので、おなかいっぱいたべてしまいました。
 しまった、おかあさんのぶんがなくなるとおもってかえると、かあさんぐまの姿すがたは、どこへえたのか、えなくなっていました。
 かあさんぐまはとおくから、「つよただしくきるのよ」と、なきながらいのっています。

 ゆうぐれさみしいやまなかかあさんこいしと、こぐまはとほうにくれて、ぽろり、なみだをこぼします。
 あてもなくあるしたそのさきに、イチゴがたくさんありました
「イチゴはいやだ」とつぶやいて、それでもかあさんがみつけてたべれるように、くさをむしりとったあと、こぐまはちょっぴりむねをはって、あるいてきました。


(昭和六十一年五月 岩手日報夕刊に掲載)