だい19 しあわせをはこぶゆき
 ゆきのあかちゃんは、まれるとすぐ、のけいこをします。ふわっと、けがをしないで、地上ちじょうにおりたつためには、のしかたが、とても大切たいせつなことなのです。

「あぁ、そんなへっぴりごしじゃ、だめだめ」
 おかあさんゆきは、あかちゃんたちを、いっしょうけんめいはげまします。何日なんにちもつづいたはげしいのけいこがおわったあとで、すっかりたくましくなった子どもたちをみながら、おかあさんゆきが、いいました。
 「このはなしは、ゆきいえにずうっとむかしからつたえられていることなのだけれど、ゆきは、しあわせを地上ちじょうにはこぶてん使つかいなんだよ。
 でも、しあわせは、とってもうすくて、つかみにくいし、すぐえてしまうから、つもりにくいものなんだよ。だから、おまえたちは、をしっかりして、しあわせをいっぱい地上ちじょうにはこんでおくれよ。
このごろ、地上ちじょうのしあわせは、めっきりすくなくなっちまったからね」
 おかあさんのはなしがおわると、出発しゅっぱつでした。l
 つよかぜいて、ゆきそらいっぱいちらばって、
よるなのにひるのようなあかるさになりました。
「さようなら、おかあさん」
「あぁ、さようなら。しあわせを、しっかりはこぶんだよ」
 それは、ながながたびのはじまりでした。
しあわせはこわれやすく、そらあかるくするほどおおかったゆきも、次々つぎつぎえてしまいました。
 どこへたどりつくのかわからないまま、ゆきたちのたびはつづきました。
「ボロボロのしあわせになったけれど、これでもやっぱりしあわせというのだろうか」
 のこりすくなくなったゆきたちが、そんなおもいをいだいていると、まえにうすねずみいろによごれきったかたまりがえてきました。
「あぁ、これが地上ちじょうというものなんだね」
 ゆきたちは、つぶやきながら、じょうずなのこなしで地上ちじょうにおりたつと、そっと、しあわせをとどけてまわるのでした。


(昭和六十一年一月 岩手日報夕刊に掲載)