だい16 ドングリたちのロックンロール
 ドングリが、ころりころころころげて、あきが、しずみます
 北風きたかぜが、きまくって、あんまりさむいので、ドングリたちは、からだをせあって、あっためています。
 おやまには、もうすぐゆきるでしょう。
さきのことをかんがえたら、ねむれないよるつづきます。
からちたドングリは、それでおわりなんだろうか」
「むかしは、人間にんげんがドングリをひろって、にてたべたけど、いまはたべるひとなんていやしない」
おとなのドングリたちは、ふかいためいきをもらします。
 わかいドングリたちは、おとなのように、さびしいことなんか、ちっともありません。
 キノコがおかのてっぺんで、コンサートがあるのです。
今夜こんやは、バンド・オブ・ドングリーズのロックンロール。
入場券にゅうじょうけんS席えすせきが、まっかなもみじのっぱ一枚いちまいせき黄色きいろっぱです。
 
キノコがおかのナラののかげから、つきがのぼるとコンサートの開始かいしです。
「みんな、元気げんきかい」
 リード・ボーカルのグッチーがこえをかけると、みんな、「元気げんき!」と答えます。
ゆきがふると、おれたちは、そのしたにうもれてしまうけど、それでも一日一日いちにちいちにちを、せいいっぱいきようぜ」
 グッチーのこえに、なみだぐみながら、みんながオーとこたええると、最初さいしょきょくはマージー・ビートで「今夜こんやはなかないで」
      北風きたかぜいてもかないで、
     ゆきってもなかないで、
     ドングリまなこになみだ似合にあわない。
     たのしくなければ、人生じんせいじゃない。
     だから今夜こんやかないで。
      はるは、まだおさなかった。なつにみんなおとなになった。
     あき、おれたちはドングリになった。
     ころりころころ、ころがる人生じんせい
     さみしいけれど、それがおれたちのさだめなの。
     だから今夜こんやはなかないで。
 ドングリーズのきょくは、いつきいても、こころにしみる。
きゃく総立そうだち。さむさなんか、へっちゃらさ。
ころりころころ、ころがって、
それがドングリ人生じんせい、ロックンロール。


(昭和六十年十月 岩手日報夕刊に掲載)