だい15 ひとりぼっちのおつきさま
 ひとりぼっちのおつきさまと、ひとりぼっちのぼうやがおりました。ぼうやは、なんとかしておつきさまのところへ行って、あそんであげたいけれど、あんまりたかくてけません
 かくれんぼしましょうか。
 「もういいかい」
ぼうやが、おそらにむかってさけびます。
「まあだだよ」といいながら、おつきさまは、ちいさなくもにかくれます。「もういいいよ」とおつきさまは、うれしそうなこえでいったけど、したからみあげると、あたまくもからはみだして、まぶしいくらい。
 「おつきさまみいつけた」
 「おやおや、にんげんのぼうや、どうしてわかったのかな
うまく、かくれたつもりだったのに」
 「こんどは、ぼくのばんだよ」
ぼうやは、くりのに、かくれます。
 「もういいかい」
 「もういいよ」
 おつきさまは、ぼうやがかくれた場所ばしょっています。
くりのに、ちょっぴりひかりをあてれば、ぼうやのあんよがえるでしょう。
いえいえ、それでは、ぼうやがまぶしすぎてこまるでしょう。
 おつきさまがかんがえているうちに、ぼうやは、こっくりこっくり、ねむってしまいました。
 このままでは、ぼうやが、かぜをひいてしまいまいます。
つきさまは、そのとき、みちをいそいでとぶようにはしってくるおかあさんをみつけました。
 くりのが、つよひかりのなかにうかびあがりました。
「ここにいたの、ぼうや。ごめんなさいね、おそくなってしまって」
 おかあさんの、あったかいむねにいだかれたぼうやは、本当ほんとうしあわせそうでした。
 おつきさまは、またひとりぼっちになったけど、
ちっとも、さみしいことはありません。
「おやすみぼうや、いいゆめをみてね」
 おつきさまは、そっと、いのるように、つぶやきました。


(昭和六十年九月 岩手日報夕刊に掲載)